ボルドー VS ブルゴーニュ

まず、このページを読んで下さる方がどの程度ワインの知識をお持ちなのか、これがホームページの怖いところで、初心者の方も私よりお飲みになっている方もいると思うのです。
従って、本来なら丁寧に初歩的な知識をこれに付記しても良いでしょう。
しかし、巷にはワイン本なるものが溢れかえっています。
ご覧になった方はお分かりでしょうが、それらは驚くほど似かよっています。
つまり、「一般的知識」は何か一冊読んで頂ければこと足ります。
(『一般的知識』は、『ワイン基礎知識』のコーナーをご覧下さい。)
ただし、それではワインの醍醐味は体験できません。
結局、ソムリエなんて奴ら(失礼!)は極意は教えてくれません。
まあ商売ですから、そんなことしたら正体もばれてしまいますし・・・
そこで私は一ボルドーフリークとして、あえて本音で語ってみようと思うのです。
その際、はじめるにあたり一つだけ申し上げておきたいことがあるのです。
私は何故、ここでボルドーについてしか語らないか、を。
実は私がワイン飲み始めた頃、ボルドーもブルゴーニュもわけ隔てなく飲んでいたのです。
料理はフレンチ好きなので、イタリア・スペインは念頭になく、フレンチの店には今のようにカリフォルニアの高級品やローヌ、南仏など置いておらず、ボルドーそれともブルゴーニュの時代だったのです。
でも、この時期、私はワインに対する見識はいくら飲んでも広がりませんでした。
シャンベルタンを飲んだとか、トロタノワを飲んだとか、その程度だったのです。
そう、ターニングポイントがあったのです。
それは、今はなき『ル・マエストロ ポールボキューズ トーキョー』でムートンの84年を飲んだ時の事です。
いくらムートンとはいえ、84年ですから、バッド・ヴィンテージなのですが、その時思ったのです。
「このワイン好き、美味しい」と。
一説によるとこの年メルロが駄目だったので、ムートンはソーヴィニヨン100%だったということですが・・・
とにかくその時「ボルドー」を飲んでみようと思った訳です。
こうしてボルドーを追い求めて行くと、実に細かな「差異」が見えてくるのです。
マルゴーとサンジュリアンと言ったアペラシオンの違いは勿論、ピション・ラランドとバロンと言ったポイヤックでもシャトーの違い、当然ヴィンテージやコンディションの問題まで徐々に分かってきたのです。
こうなれば、他の地域との区別くらい、ちょと飲めば分かるようになります。
カリフォルニアかチリか、この区別さえ数本のんでみればすぐ分かるようになります。
つまりは、ともかくもボルドーならボルドー、ブルゴーニュならブルゴーニュをとことん飲んでみること、この必要性です。
するとおのずと日常飲むべきワインのレヴェルも決まってきます。
ですから、ソムリエはかわいそうなのです。
あらゆる地域のワインを飲まされ、しかも高級品ばかり。
これでは何も見えてこないのです。
例えば、パリに行って、確かに安くぺトリュスを買うのも良いでしょう。
しかし、日本ではお目にかからないブルジョア級の古酒やグレイト・ヴィンテージを見つけることこそ、ワインラヴァーとしての喜びではないでしょうか。
つまり、皆さんには、僕の書いた事を参考にして、それぞれお好きな地方・国のワインを徹底的に飲み進めていただければ、きっと深意なるワインの世界が見えてくると思います。
この事を念頭に置いて読み進めて下さいますことを心より思っている次第です。

では、本題に移りたいと思います。

初回3回は、いわばボルドーという森を俯瞰して頂く事になります。
「木を見て森を見ず」では困りますから。
ですから、この3回は細かいことは余り気にせずに、各回二種類のワインの違いを全身で感じていただきたいのです。
そうすれば、必ずボルドー・ワインの全体像がおぼろげながら見えてくるはずです
しかも、飲んでいただくワインは日頃ご家庭で楽しんで頂ける物のなかから私が頭と足を使って厳選したものです。
という事は、ボルドーに限らず、皆様はご自分のお好きなワインでいろいろな比較を試みる事ができるのです。
ポイントの第一は比較のための最低の情報は入手すること。それを怠ってはいけません。

そこで第一回目は、ボルドーVSブルゴーニュという余りにも大雑把で大胆な企画。
しかし、実はこれとてそれ程無謀ではないのです。
ブルゴーニュは「ワインの王様」、ボルドーは「ワインの王女」と呼ばれています。
ということは、世界中のワインが(特に新世界ワインは)目標としているのはこの二つの地域なのです。
これは端的に、葡萄の品種の違いといえます。
つまり、ピノ・ノワールとカベルネ・ソーヴィニヨン(あるいはメルロー)。

前者は、揮発性の強さからくる香りの豊潤さとアタックの強さ、酸味の爽やかさなどがポイントになります。
ボルドーはなんといっても渋味、タンニンのバランスが魅力です。
あとは、熟成感、つまり基本的に長持ちするワインの各時期における味わいの違いが面白い味だと思います。

ちなみに、ボルドーの97年というのは、比較的早飲みの年と思われ、ヴィンテージ的にはあまり高い評価を得ていないため、比較的手頃な値段で購入できて、今飲んでもそれなりに楽しめる年です。このサロンでもこの年のワインを基本的に紹介していこうと思います。すると、ワインによってまだ硬さがあって早すぎると感じたり、逆に柔らかく、香り味ともに広がりがあって最初ののみ頃だと思われるものもあると思います。こうした飲み方を水平試飲といいます。

さて、ボルドーとブルゴーニュの選び方の違いですが、これはよく、シャトー制とドメーヌ制といわれています。
ボルドーはとにかくシャトーの名称を覚えればよい。
例えば、「シャトー・パルメ」の86年が美味しかった、とか。
確かに、パルメはマルゴー地区を代表する優れたシャトーです。
ここでの問題は、その方がマルゴーのワインがお好きなのかということです。
シャトー名を覚える事の罠は、一部の高級ワインのブランド志向といかにも日本人の好きそうな事です。
でも皆様はご心配なく。ボルドーの本質へ迫っていただきますゆえ。

その点、ブルゴーニュはちょっとややこしい。ドメーヌというのは、畑・土地などという意味です。例えば、かの「ロマネ・コンティ」などはわずか1.8haの畑の名前ですので問題はないのです。
しかし、このヴォーヌ村の最もポヒュラーなワインの一つ「ヴォーヌ・ロマネ」になると講談社の『名酒事典』だけで16種類も載っています。
しかもどれも一本5,000円以上するものばかり。いったいどれを選んでよいやら。

ここでドメーヌのもう一つの意味を。それは「造り手」の事を指すのです。今回の「ルイ・ジャド」社は高い評価を得ています。
さらに、アンリ・ジャイエのような個人名まで出て来る始末。ブルゴーニュがマニアックになっていくのはこうした未知の「造り手」を探し出し、その希少なワインを手に入れようとするからです。

まあ、ともかくボルドーから始めましょう。

writen by o.s
arrenged by paul